英語の通訳


  英語論文の投稿支援、企業の社内英語文書の作成、既存の英語の校正といった「ライティング業務」の他に、「通訳業務」も行なっています
  なお、臨床やビジネスの場では、当然のことながら、専門用語だけから成る会話や協議がなされる訳ではありません。通常は、言語にかかわらず、一般用語を織り交ぜた会話やプレゼンテーションが行われます。例えば、一般女性を対象とした乳癌に関するセミナーにおける以下の冒頭の場面を想定してみましょう。
「本日は女性における乳癌に関するセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。乳癌は、遺伝的素因等の危険因子が無い限り若年女性で発生することは稀です。マンモグラフィによるスクリーニング検査は、疑陽性率の上昇と不要な生検の増大と関連しています。従って、40歳未満の女性に対してマンモグラフィによるスクリーニング検査を日常的に実施することは推奨されていません。」
  上記の発言には「乳癌」、「マンモグラフィ」、「疑陽性」という専門用語が使用されていますが、何れも一般女性が理解出来る平易な専門用語です。従って、特別な解説を要することなく「発語」出来ます。本内容は、以下のように通訳されることになります。

"Thank you very much for attenting today's seminar on breast cancer in women. Breast cancer rarely develops in younger women unless having risk factors such as a hereditary predisposition. Screening mammography is associated with higher false-positive rates and with increases in unnecessary biopsies. Therefore, routine screening of women under age 40 by mammography is not recommended."

  通訳時の「聞き取り」および「発語」は、発音、会話速度、声量、訛り、語調、滑舌の程度、発言内容の難易度等といった様々な要因により、「正確に聞き取れる量」および「正確に発語出来る量」がそれぞれ大幅に左右されます。例えば、「かくせい(郭清)」という日本語の医学用語があります。もし本用語をその同音異義語である「覚醒」と聞き違えてしまうと [arousal] と英訳することになり、文脈上全く意味を成しません。逆に、「郭清」を意味する英語の専門用語である [dissection] もしくは西語の専門用語である [disección] が発言者により正しく発語されたとしても、通訳者がその用語を英語あるいは西語で理解出来ない場合、もしくは英語や西語で理解出来ていても「郭清」という日本語の医学専門用語を知らない場合、同専門用語を英語の「音」としてしか認識出来ない事態あるいは同概念を正確な日本語の専門用語として伝達することが出来ない事態が生じることになります。これらの事例から、「語彙力の豊富さが通訳の根幹を成していること」が容易に理解出来ます。言い換えると、この事実は、この根幹部分が確保されている限り、発言者の発音が多少不明瞭であっても理解することが可能となり、たとえネイティブスピーカーほど綺麗な発音が出来なくても相手に概念を正しく伝達出来ることを意味しています。
  当然のことながら、通訳の水準を書面により正確に評価することは出来ません。しかし、上記の解説文を介して通訳者の文章作成能力を評価することにより通訳の水準をある程度推察することは、十分に可能です。何故なら、通訳業務とは、通訳の対象となる発言内容を正確に「聞き取る行為」もしくは「言い換える行為」に他ならないからです。
  翻訳業務の場合には、必要に応じて手持ちの辞書やインターネットで検索・調査する時間的余裕がありますが、通訳の場合にはありません。だからこそ、通訳を行う対象となる課題に関連した資料、情報、概念、専門用語等を事前に徹底的に収集し、それらを聞き取れる/言い換える状態にする作業が必須となります。
  そうは言っても、理解出来ない用語や概念が「発語」された場合、それを「聞き取る」もしくは「言い換える」ことは実際には無理です。また、元来、人間は聞き取れない言葉を発語することが出来ません。しかし、逆に言えば、例えば、「不斉重合(ふせいじゅうごう)=asymmetrical polymerization」という化学専門用語を記述出来る能力があれば、それを「聞き取る能力」もしくは「発音する能力」がネイティブスピーカーよりも多少劣っていたとしても、通訳業務は十分に遂行可能となります。要するに、翻訳業務と比較して、通訳業務はより多くの「柔軟性(理解出来なかった場合にはその場で発言者に対して意味を確認する、相手に通じなかった場合には瞬時に別の用語に言い換える等)」を伴う業務であると言えます。